皆さんはポケモンSVは買いましたか? 周りが「ミライドンいい! ミライドンいい!」と言っている人ばかりだったので敢えてスカーレットを買ったんですが、最後のポピーとオーリムの話では無事に目からハイドロポンプが出ましたね。
最初にプレイした時にはストーリーに感動し、改めて他の方のプレイ動画を見たらBGMに惹かれてしまい、こうユーザーを夢中にできるのは本当にすごいと思ったので、どうやったらこういう曲が作れるのか勉強のために分析してみたいと思います。
ちなみにラスボス戦のBGMはToby Fox氏が作曲しており、他にも何曲か提供しているようです。
今回はこの記事を読んでくれた皆さんにも役に立つように、ある程度主観を交えて専門用語は少なめで解説していきたいと思います。また、私はあまりToby氏の曲を知らないので「他にもこの曲に似てるよ〜」といった情報があればぜひ教えてください。
分析
曲を聴いて気づける順番に書き進めたいと思います。
[A] (8+8)
キラキラした音で曲が始まりますが、普通なら単なる繰り返しにするところを余韻を伸ばしたりオクターブうえの音を追加したりして変化を持たせています。とても芸が細かいなって感心してしまいます。
キラキラの後ろではコーラスパートが鳴っていますが、持続音と半音ずつ下がってくる2つのパートがあります。
上の楽譜で言うと7-8小節目でG♮とG♭が同時に鳴っているのですが、これはあまり聞かない響きだと思います。まとめて書くと次の楽譜のようになります(レジ系の顔みたいですね)。
キラキラの音とコーラスの音からKey=E♭mだと予想できるのですが、このキーでこんなコードは普通使われませんし、何よりどのキーにも自然には現れません。
あえて分析するなら、ルートが省略されているE♭とE♭mのコードを重ねた形だと言えると思います。もしくはKey=E♭とKey=E♭mが共存していると言ってもいいかもしれません。
(ちなみにクラシック音楽ではdur-moll和音と呼ばれる似たような和音があると思いますが、今回の和音はそういうものではないと思います)
意図的に音をぶつけて不協和にさせていると思うのですが、これは「相入れない2つのものを無理やり共存させている」ということを表現するためなのでは、と思ってしまいますね。
[B] (8)
ベースがバスドラムと同じ特徴的なリズムでミ♭とファ♭を繰り返すので、ここでKey=E♭mだと断定できます。メロディーは下のパターンの繰り返しです。
これはほぼテラレイドバトルの冒頭に出てくるキラキラのパターンと同じで、[A]で出てきたキラキラもこのパターンを元に装飾しています。
数小節にわたって同じことを繰り返すのはポケモンのBGMではよくある手法ですよね(いい例を見つけたら紹介します)。
[C] (8+8)+(8+8)
ストリングスがメロディーを演奏しますが、最初のB♭ーC♭ーD♭ーC♭の動きはポケモンのBGMではとても頻繁に出てきます。
例えば次の戦闘!マグマ団・アクア団(該当箇所から再生されます)では全く同じ高さで出てきますし、他の曲でも「半音上がって、全音上がって、元の音に戻る形」は頻繁に使われています。
ファイアレッド・リーフグリーンあたりのサントラのライナーノーツで「アジアの音階を意識的に使っている」みたいなことが書かれていた気がするのですが、ポケモンの曲は初代の曲から長調でも短調でもない音階で作られているものが多いです。
例えば下の楽譜はフリジアンスケールを並べたものですが、これを鳴らすだけで独特な響きがすると思います。特に、1,2,3番目の音を往復するだけでもそれっぽくなるのですが、これは上に挙げたB♭ーC♭ーD♭ーC♭の動きと一致します。
このセクションの13~16小節目、楽譜にするとダブルフラットが出てきて難しそうですが、コードで見れば割とイメージしやすい音が並んでいると思います。
この動きは普段なかなか使わない動きなんですがとても既視感(既聴感?)があり、最初聞いた時はなぜそう思うのか不思議でしたが、実はテラレイドバトルで聞かされていたんですよね。
半音低いですが、ループ直前の繰り返しの部分でD♭-E♭として現れていました。
こうやって曲に使う要素を他の曲でも予め使っておいて、新しく出てきた曲を自然に聞かせる工夫をしているのは大変参考になりますね。
[D] (4)
繋ぎの部分でしょうか、特にまだ何も見つけられています。
[E] (8)
ここではテラレイドバトルのエレキギターが出てくるので、気付いた方は多かったんじゃないかと思います。元々はKey=Fでしたが、ここでは半音下げられてKey=Eになっています。
ベースのC♯の上に乗せられているのでKey=C#mにも聞こえますが、Eの頻度が多くて明らかにメジャーキーのメロディーラインに聞こえるので、ここでも相容れない2つのものを無理やり共存させている感があります。
[F] (8)
ここも[D]と同じように繋ぎの部分になるんだと思いますが、F(E♯)が聞こえてくるので無理やり明るくされている感じがします。
コードは明確には聞こえないですが、だんだん上がってきているように聞こえますね。
[G] (8)+(8+8)
ここで出てくるエレキギターも音を変えらえていて、F(E♯)だけでなくC(B♯)も出てきます。
[H](4)
繋ぎの部分だと思いますが、ここがあるお陰で次の部分が際立って聞こえるように思います。
[I] (8)
ペコペコ言っている電子音は元々のバスドラムのパターンに似ています。スーハースーハーと聞こえる音は何を表しているのでしょうね。
[J] (8)
キラキラとコーラスが復帰して[B]に戻ります。
ループする曲は明らかに戻ってきた感があることが多いのですが、若干アレンジが違うので気付いたら戻ってきた感じが強いですね。
まとめ
曲全体を通して、BGMとしてはかなり異質な音が使われている部分が多く感じました。
また、私自身も作曲家として活動していますが、ゲームに合わせた曲作りならその世界観を保ちつつ自分らしさがないと意味がないと思いますので、大変難しい作曲だったんじゃないかと思っています。
この曲を分析して分かったことを活かして、私もより面白い曲を作りたいと思っています。作曲依頼、今後も募集しています!
「こんな内容を扱ってほしい!」というリクエストがありましたら、こちらのフォームから入力していただけたら、ふとした時にまとめるかもしれません。