コラム

楽曲分析のコツは〇〇で考えること

演奏・作曲をする人どちらにも当てはまるのが、いい音楽を作るためには楽譜を分析してしっかり読み込まないといけない、ということだと思います。

しかし、その分析は自己流になってしまってはあまり良くないですから、他の人が聞いても納得できるようにする必要があります。

とはいえ楽曲分析なんてやったことがない、専門的な知識は持ち合わせていないという人もいるでしょうから、今回は簡単な楽曲分析のコツをお話しします。

そもそも分析とは

分析する、というのはあるものをいくつかの要素に分解して観察することと言い換えてもいいかもしれません。

楽曲分析ならば、メロディー、和音、リズム、楽器の使い方、セクション、時代様式…などの要素に分解して観察していくことになりますね。

そのそれぞれについて、作曲家がどのように意図して作ったのか、演奏するにあたっては何に気をつければいいのかを検討していきます。

「この部分は強く弾きたいからそうするんだ」というのも、無くはないのかもしれませんが、それは単なる自己満足でしかなくて、聴く人のことをまるで想定していない考え方です。

聴く人に伝わるような音をどのように生み出すか、これを考えるために行うのが楽曲分析と言えるでしょう。

楽曲分析のコツ

ずばり「楽曲分析のコツは『もし〜なら』で考えること」です。下の画像はベートーベンの「エリーゼのために」です。

  • もし8分の3拍子ではなくて、4分の3拍子だったら
  • もしppではなくてmpだったら
  • もし全てのまとまりにスラーが書かれていたら

楽譜に書いてあることとは違う展開を想定し、元の状態と比べることで「なぜこの部分はこうなっているのか」を考えることができると思います。

楽譜に書かれている音符や記号は、最初から完成形で書かれているわけではありません。

作曲者のなかで試行錯誤があって、書いては消し、書いては消し、理想の音楽を吟味していくプロセスがあります。

今手元にあるその楽譜は最終稿であるだけで、その前にはその音符や記号が別な場所にあったり、別なものであった可能性もありますよね。

それならば「もし〜なら」ということを想定して、作曲家の制作プロセスを追体験して、曲に対する理解を深めることはできるはずです。

ただ、それと同時に主張する音には説得力を持たせる必要があり、誤読した内容を音に乗せて届けようとしても、伝わりません。

その主張をさらに強めるための根拠を用意しておく必要があり、そのためにできることがいくつかあります。

作曲家を深く理解する

例えば僕はドビュッシーのピアノ作品が好きなのですが、一つの曲を分析するために、作曲者の生い立ちだったり、親交のある芸術家だったり、同時期の作品だったり、ピアノ作品だったりを全て眺めます。

つまりその1曲が出来上がるまでに、どういう経験をしてきたのか、どういう考え方を持つようになったのかを知ることで、「ドビュッシーならこう想定していたに違いない」と考えられる、というわけです。

音楽理論を勉強する

それぞれの音符にどのような役割があるのか分からなければ、細かいところまで観察することができません。

音楽理論は言葉で言うところの文法のようなもので、音符の裏側にある機能を知ることができます。

音符の並びは無限にあっても、それらの役割には限りがありますから比較的楽に音楽を把握することができます。

他の人の分析を知る

ドビュッシーの分析をしていた時は、ネット上に公開されている論文や分析書、出版譜の最初に書かれている曲解説、CDのライナーノーツなどを読みあさりました。

パクるために読んでいるわけでは無く、ドビュッシーを語る上では欠かせない要素を見つけるために読みます。

このようなことを勉強して訓練すれば、同じ作曲家の他の曲、違う作曲家の曲にもその分析力を適応していけるはずです。

楽曲分析をせずとも音を作り出すことはできますが、ぜひ深みのある音楽を作り出してもらえたらと思います。

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