コラム

4096分音符は演奏することができるか

学校で授業をしていると、よく音符の説明をします。名前と、その形と長さについて話すことが多いです。

上の動画のサムネイルにも”……”としか書いていませんが、ルール的には16分音符以降の音符は規則に沿って無限に作り出すことができます。

その説明をすると子どもたちの興味は留まることを知りませんので、こんな音符を書く羽目になります。

旗の数は10本、一般的な楽譜に出てくることはもちろんありません。

ただこれを演奏できるのか子どもたちは気になるようなので、今回はそもそも演奏できるのか、そして演奏できるならどのように演奏できるのかを考えてみたいと思います。

ちなみに4096音符というのは、浄書ソフトとして有名なFinaleで扱える最小の(ゆえに浄書ソフトとしてもここまでで十分だろうと考えられている)音符を想定しています。

音符とテンポについて

そもそも音符の長さというのは相対的なもので、時計の秒針のように長さが絶対的に決まっているわけではありません。なのでテンポ(=1分間に基準音符を何回打つか)を決め、そこから音符の秒数が決まるわけです。

例えば4分音符を、4分音符=60で演奏すれば1秒、4分音符=120で演奏すれば0.5秒になります。

今回は音符の秒数にスポットをあて、テンポについてはおまけ程度で記述したいと思います。

グランドピアノで再現するには

普通にピアノを弾いている時に意識することは少ないですが、グランドピアノは鍵盤を押すと接続されたハンマーが上がり弦を叩く構造になっています。

なので、そのハンマーが戻って再度上がる状態になるまでは物理的に音を鳴らすことができません。

(下の動画はハンマーが動く箇所6秒のみ再生されます)

ヤマハやカワイのホームページによると、グランドピアノの場合は1秒間に14~15回打鍵することができるようなので、仮に15回鳴らすことができると考えると、1回あたり1/15(≒0.07)秒になります。

これがグランドピアノで鳴らせる一番短い音だと仮定し、4096分音符を0.07秒で演奏しようとすると、4分音符の長さは1,024倍の約68秒になります。

これを元にテンポを決めると、4分音符≒0.88で演奏すれば4096音符をグランドピアノで演奏することができます。

一瞬ピアノを鳴らして68秒待つと、ようやく4分音符分の長さが演奏されたことになるわけですね。

ちなみに、4分音符=60で演奏した時の4096分音符の長さをMaxというソフトを使って鳴らシミュレーションしようと思ったのですが、計算では約0.001秒になってしまい、実際に確認することはできませんでした。

まとめ

確かに4096音符は演奏することはできますが、尋常ではなく遅いテンポで演奏するか、驚異的に短い音を鳴らす必要があります。

4096分音符が出ることに伴って、2048分音符なども出てきて見にくくなってしまうので妥当なのかもしれませんね。作曲するときは使うとしても64分音符までにしましょう。

おまけ

オンラインサロンでお世話になっている大中さんから興味深いコメントを頂いたのでコピペしておきます。

BPM=60の時に4096分音符の長さ(周期)は約1mS(約1/1000秒・正確には1/1024秒)となり、4096分音符が連打された時を周波数に換算すると約1kHz になります。これはほぼC6相当の周波数になり、もうこれ自体が音そのものですね。(しかも、相当高い) さらには、もしC6をBPM=60のテンポで4096分音符で鳴らすと、やっとほぼ”1周期”を鳴らせる時間に相当するので、最低限の音程の概念を確保できるのはC6よりも高い音であるという事になります。例えばC4を4096分音符で鳴らすと、その音は1/4周期分進んだところで打ち切られてしまい、C4がC4として成立しない事になってしまいます。ですので、仮に通常な音程(C2~B6くらい?)のところで4096分音符のアルペジオを演奏した場合、それは演奏と言うよりは、それ自体がもはや「シンセサイザー」になってしまうと思われます。 と、考えると、このような超短音価な世界の楽譜では、音程の変化は音色を表現する事になり、音価をどう並べるかという従来リズムを表現していた概念が音程やメロディーを表現する事になるという、新しい音楽表現が開拓される事になると思います。これは、実によしたく先生らしい新たな音楽分野になるかもしれません。 ただ、現存するアコースティック楽器でこれに追従できるものは無いので、追従できる発音システムと、演奏者の身体動作をそこに伝えるための機構を備えた新たな楽器の発明が必要になると思われます。 成功すれば、音楽史に名を残せると思いますので、是非お手伝いさせていただければと思います。

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