これまで合唱コンクール向けの指揮の動画をいくつか出してきましたが、文章でもまとまってた方が便利かもと思ったので、楽曲分析の記事を書いてみたいと思います。
基本的には人気の高い曲から優先して書こうと思うんですけど、私の気まぐれで書いたり書かなかったりするので、書かれていない曲で質問があればpiyotaku3@gmail.comまでご連絡ください。
作曲者について
音楽ユニット、アクアマリンのミマスさんが作った曲です。下の動画の中でキーボードを弾いているのがミマスさんのようです。
2000年に富澤裕さんが編曲しました。多くの合唱曲を編曲している方ですが、「あの宙より」の作曲者としても知られています。
余談ですが、私が中学校の合唱指導をしていたときにその中学校の音楽の先生から「今日は富澤先生も来るんですよ〜」と言われ、偶然富澤裕さんにお会いしました。合唱に対して真剣で、でも朗らかに話をしてくださる方だったと記憶しています。
「あの宙より」の作曲者だというのは2行上の文章を書いているときに知ったのですが、中学3年生の時に合唱コンクールで伴奏をしたので、その話をすればよかったと後悔しています。
アクアマリンのホームページ、音楽之友社のホームページ1、ホームページ2にも細かい話が書かれていますので、合わせてご覧ください。
曲について
楽譜は著作権の問題でアップロードすることができないので、手元の楽譜と合わせて読み進めてください。
イントロ(1~4小節目)
高い音域でのメロディーが、左手の分散和音と一緒に演奏されます。このメロディーはサビの後半(30~33小節目)のメロディーと同じです。
この曲の名前でもある「COSMOS」は花ではなく宇宙のこと(作曲者のホームページを参照)なので、伴奏は優しく、空に星がきらめているイメージで演奏してみるといいかもしれません。
Aメロ(5~20小節)
5小節目、歌い初めの部分(夏の〜)は、男声も女声も同じメロディーを歌います。
これはユニゾン(厳密にはオクターブなんですが)と言われますが、曲を徐々に展開させる、メロディーと歌詞をちゃんと聞かせるために、最初はユニゾンにする曲が合唱では多いです。ユニゾンの部分を歌うときは落ち着いて、深い声を出すようにするといいと思います。
8小節目の最初(高く〜)に向けて少しクレッシェンドをしてもいいでしょう。音が高くなるとクレッシェンド、低くなるとデクレッシェンドになるのはよくある表現方法です。
指揮も連動して大きくしたり小さくしたりする必要がありますが、この部分はサビでダイナミックに振るのを見すえて控えめに振りましょう。
13小節目(君の〜)からは各パートが少し動きます。それぞれのパートの歌い出しをはっきり発音した方がパートが移り変わることが分かりやすいので、ここでは「き」の発音をはっきり発音しましょう。
その後の部分(ぬくもりは〜)は、縦のリズムが揃っているのでハーモニーに気をつけて歌います。テノールの「も」の音が、和音を支えるためにソの音に変わっているので注意が必要です。
19小節目のテノールはサブのメロディーですが、せっかくなら少し大きめに歌いましょう。ソプラノのメロディーは既に1回聞いて耳が慣れているので、違う刺激があった方が聞いている人は楽しいと思います。
Bメロ(21~25小節)
他の部分と比べて短いセクションですが、変化がありいい味を出しています。
臨時記号のフラットがたくさん出ていて音が取りにくいのですが、ここはフラット6つの調(変ト長調/変ホ短調)に転調しています。
元はフラット3つの調(変ホ長調)ですが、転調させて色合いを変えることで翳り(かげり)のようなものを作り、Aメロとコントラストを作っています。この転調はポップスではあまり見られません。
転調していることもあってアルトの音が取りにくいと思いますが、内声はサウンドの要になりますので、しっかり音取りの練習をしておきましょう。
24,25小節目のクレッシェンドは大袈裟なくらいやっていいと思います。合唱指導に行って歌を聞いても聞いてる側は大きくなっているとあまり感じず、サビへの期待感を持てないことが多かったので、「これはやりすぎじゃないか」と思うくらい大きくしてみましょう。
その期待感がサビの頭で爆発することで、聞いている人に大きなインパクトを与えられるはずです。
サビ(26~42小節)
Aメロの歌い出しは最初に休符が入り、Bメロの歌い出しは小節の前にはみ出ているのですが、サビは小節の最初から始まります。
小節の最初の拍(=強拍)にはアクセントがついて聴こえることが多いです。「ひ」という音は発音がしにくいのですが、その効果を活かしてはっきりと歌いましょう。
特にソプラノと男声は高い音から始まるので、しっかり息を吸って歌うようにしましょう。
指揮は音量がフォルテになっていることと、サビであるということを踏まえて大きく広く、ダイナミックに振るといいでしょう。指揮の大きさで宇宙の大きさを表現するようなイメージです。
29小節目の終わり、男声が「きみ」と歌い、2拍遅れて女性が同じく「きみ」と歌いますが、これもそれぞれがちゃんと聴こえるように「き」の発音を大事にしてください。
32小節目からは少し音量を抑えて、フレーズが終わることを表現しましょう。
34小節目からは歌詞がなく、Ahで歌うことになりますが、基本的には26小節からと同じです。
それ以降(42小節~)
42小節からは2番になりますが、1番とは違ってソプラノだけで始まります。音量もp(ピアノ)まで下がっていますから、丁寧に歌いましょう。
アルトが入るところはやはり「ひ」の発音で聞き取りにくくなります。しっかり発音しましょう。
「しあわせになれるはず」の部分は綺麗にハモれるように編曲されています。1音ずつ音を確認して綺麗なハーモニーを作れると良いと思います。
64小節目の転調は、ポップスにありがちな半音上への転調です。ただ、歌い始めがミ♮になってしまうので、中には高すぎて歌えないという人もいると思います。腹筋で声を支えるようにして、全身を使って歌うといいでしょう。
おまけ
指揮に特化した内容ではありますが、動画にもまとめているので見てみてください。
「こんな内容を扱ってほしい!」というリクエストがありましたら、こちらのフォームから入力していただけたら、ふとした時にまとめるかもしれません。