日頃私たちが使っているド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シはイタリア音名なんですが、吹奏楽やオーケストラなど、実際に楽器を演奏する場所ではドイツ音名を使うことがあります。
これを知らないと指揮者の指示や仲間の言っていることが全く分からないと思うので、今回はドイツ音名について簡単に説明をしてみたいと思います。
ドイツ音名とは?
合奏に参加したことがある方は『ベーが少し低いかな』『この曲はアードゥアだから…』と言った、謎のカタカナ語を聞いたことがあると思います。
これらがドイツ音名で、ドイツ語のアルファベットに沿った言い方です。基本となる7つの音は次のようになります。
C(ツェー)、D(デー)、E(エー)、F(エフ)、G(ゲー)、A(アー)、H(ハー)
エーとアーが英語と混ざって分かりにくくなることと、Aの次がHであることに注意してください。
さて、これらの音にシャープが付くと、それぞれの音名に-isがつく形に変化します。
Cis(チス)、Dis(ディス)、Eis(エイス)、Fis(フィス)、Gis(ギス)、Ais(アイス)、His(ヒス)
また、フラットがつくとそれぞれの音名に-esがつく形に変化します。
Ces(ツェス)、Des(デス)、Es(エス)、Fes(フェス)、Ges(ゲス)、As(アス)、B(ベー)
Hのみ変則的に変化します。その理由については『♯♮♭の形の由来』が参考になるかもしれません。
最初に書いた『ベーが少し低いかな』というのは、イタリア音名で言い直すなら『シ♭が少し低いかな』ということです。
また『この曲はアードゥアだから…』というのは、ドゥア(Dur)というのがドイツ語で長調なので『この曲はイ長調だから…』ということになります。
なぜドイツ音名を使うのか
単にカッコいい、それっぽいなという感じもしますが、実はたいへん実用的な面があるから使われています。
吹奏楽やオーケストラには移調楽器という、運指と出る音が異なる楽器があります。
簡単に言うと、カラオケのキーのようなものが最初から上がっていたり下がっていたりしている状態の楽器だと考えてください。
それらの楽器は、楽譜に書かれた音(=記譜音)と出てくる音(=実音)が異なります。
例えばクラリネットにはB管(楽譜には”in B“と書かれます)という種類がありますが、この楽器は記譜音の運指で吹くと全音下の音が鳴ります。
これを分かりやすく説明するために、記譜音はイタリア音名、実音はドイツ音名で言うことがあります。
例えばB管の楽器で、記譜音がドなら実音はBです。記譜音がミなら実音はDです。
これを合奏では口頭で説明しないといけないので、そのためにイタリア音名だけではなく、ドイツ音名を使うことがあるということです。
おまけ
弦楽器や鍵盤楽器、移調楽器ではない管楽器では記譜音と実音が一致するので、イタリア音名でもドイツ音名でもいいのですが、混乱を避けるために統一してドイツ音名が使われます。
また、ダブルシャープは-isis、ダブルフラットは-esesが付く形に変化します。シ♭♭のみ、HesesやBB、Besなどの言い方があります。
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