音楽を構成する要素である和音ですが、その曲の雰囲気を決めるのと同時に、作曲家のこだわりが強く出てくる部分でもあります。
今回は和音のテンションについて、クラシックの曲を参照しながら説明していこうと思います。
和音の基本
上に挙げたハイドンの交響曲第94番第2楽章「驚愕」は、ハイドンの曲の中でも比較的有名かもしれません。演奏会中に寝ている人を起こす曲です。
ハイドンの時代の曲は、非常に簡単な和音を使って作られています。和音の基本形は「だんご三兄弟」の形をした3和音なんですが、まさにそれだけで曲が作られています。
その基本形が時代を下るにつれて上に伸びていくようになりました。それぞれ4和音、5和音…と呼びます。
だんご三兄弟の上に新たにくっついた音のことをテンションと言うのですが、どうやらこれはエクステンション(拡張)のことらしいですね。
一番右のやつはちょっと長すぎな感じがしますから、真ん中あたりの音が省略されることが多いですね。
もしくは上の方の音をオクターブ下げてクラスターにすることもできますね。とにかく強烈な響きになります。
それぞれの和音の例を下に並べてみますので、順番に聴いてみましょう。
4和音
モーツァルトのディベルティメントです。序盤からチラチラと4和音(ラド#ミソ)が出てきていますね。
テンションは、基本的にはメロディーラインに現れます。それが和音の中に組み込まれて上に伸びていきました。
5和音
時代がすっ飛びますが、ラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌです。この曲は5和音のオンパレードです。
6和音〜
ストラヴィンスキーの「春の祭典」です。かなり複雑な響きになっているので、この辺りの曲は多くの人が不協和音だと思うでしょう。
結局和音を伸ばすのは7和音が限界なので、和音のシステム自体が壊れてしまいました。
シェーンベルクの「ピアノ組曲」です。和音だけではなくてこの頃から長調・短調も無くなり、無調と呼ばれるようになりました。
というように、和音の複雑さは時代によって大きく変わってきましたが、実はジャンルによっても変わります。
ロックはテンションが少ない傾向にあって、ジャズはテンションがかなり多い傾向にありますね。
ここまでテンションの話をしてきましたが「結局どういうものだと思っておけばいいの?」と思っている方もいるかもしれません。
僕自身は、テンションを「調味料やスパイスのようなもの」だと思っています。
最初こそ単純な味付けでもいいんですが、少しずつ複雑な味を望むようになる。
おしゃれなお店の料理とか、披露宴で出てくる料理とかって謎の風味がしませんか? あれを美味しいと思っている状態です。
ちなみに僕の曲も少しずつ響きが複雑になってきていて、最近作った曲ではこんな和音も使っていました。
今改めて鍵盤で弾いてみるときつい響きに聞こえますが、このくらいテンションが入っていないと満足できない体になってしまったんでしょうね。
今は生徒たちが全く同じ状態になるように耳を鍛え上げているところです。
「こんな内容を扱ってほしい!」というリクエストがありましたら、こちらのフォームから入力していただけたら、ふとした時にまとめるかもしれません。