かつてはデジタルシンセサイザーやソフトシンセサイザーだけで曲を作っていたのですが、コロナ関係の補助金で10万円分まで消耗品を買えたことがきっかけで、Moogのセミモジュラーシンセサイザーに手を出してしまいました。
最初は「鍵盤がないシンセサイザーなんて使いにくいだけ…」と思っていたのですが、結果机の周りに並べるだけでは飽きたらず、新しい機材を求めて中古市場も眺めるようになってしまいました。
最近は優秀なソフトシンセサイザーが多く、DTMで曲を作っているが実機のシンセサイザーは持っていないという人も多いと思います。ですが実機には実機の良さがあるので、所有している7つのMoogシンセサイザーを紹介して、その魅力をお伝えできたらと思っています。
Moogのシンセサイザーについて
アメリカ人のエンジニアであるロバート・モーグが制作した、古くは冨田勲の編曲作品やウェンディ・カルロスの”Switched-On Bach”で用いられたアナログシンセサイザーです。
最初期のMoogのシンセサイザーはものすごく大きくて重く、パッチケーブルを接続したりツマミを調整したりして音を作らないといけない(つまり音色のメモリーができない)代物でした。
Moogが最初期のシンセサイザーを開発したのが1964年、そこから60年近くも経過するとシンセサイザーの形状もシステムも全く変わります。今回紹介する7つのシンセサイザーは見た目こそ大きく異なるものの、そのDNAが受け継がれているシンセサイザーたちです。
また、アナログシンセサイザーは一般的に「音が太い」と言われていますが、まさにその通りだと私も思っていて、スピーカーから直接鳴らすだけでかなり存在感のある音を鳴らすことができます。
特にベースの音域だと、マンションなら隣の部屋だけでなく階下にまで抜ける極太の音を鳴らすことができます。
1,2,3. Mother-32 / DFAM / Subharmonicon
鍵盤がなく、ツマミの操作と右側にある穴をパッチケーブルで接続して音色を作るモジュラーシンセサイザー3種です。
全て同じ形ですが、Mother-32はメロディーやベースを、DFAMはドラムを、Subharmoniconはハーモニーを作りやすいようにツマミが用意されています。
右側にはパッチケーブルを接続できる部分があり、対応する入出力を接続するだけでなく、他のメーカーのモジュラーシンセサイザーと連携させて使うことも可能です。
音色のメモリーはできませんし、パッチケーブルを毎回抜いたり繋いだりするのは大変ですが、どんな音色が出るのかをツマミやパッチケーブルから判断できるのは一種の強みだと思います。
3種全てにシーケンサーが搭載されており、Mother-32はmidi端子が、Subharmoniconはmidiを受信できる端子があるので、一般的なシンセサイザーやDAWと連携させることも可能です。
最近ではお得なセットになったMoog Sound Studioなるものが販売されているので、もし購入するならアクセサリーもまとめて購入した方がいいかもしれません。
4. Subsequent 25
鍵盤のあるタイプのシンセサイザーです。普段から鍵盤を弾いている身からすると、鍵盤があるだけでかなり安心感があります。
同時に2音鳴らせるデュオフォニックのシンセサイザーなので、基本的には和音の形で、演奏の仕方によっては2つ目の音を分けて演奏できます。
鍵盤数が25と少なめですが、音を太くさせるためのツマミやオクターブ下の音を鳴らせるオシレーターもあるので、メロディーかベースラインを演奏する使い方がいいと思います。
鍵盤数が25と少なめなので、メロディーかベースとして使い、2つ目の音は倍音を強化するために鳴らすのがいいと思います。
フィルターの効き目は大変よく、真ん中にある大きなカットオフのツマミを回して音色を変えると大変気持ちいいです。
これの上位機種のSubsequent 37もあるのですが、持ち運びのことを考えるとこのくらいのサイズがいいのかと思って購入しておりません(でも欲しいです)。
5. Claravox Centennial
いわゆるテルミンです。テルミンが作られてから100周年記念モデルらしく、とても良い素材で作られており値段もそこそこします。
モノシンセをテルミン型コントローラーで操作しているという感じですが、数オクターブに渡るポルタメントを演奏できるシンセサイザーは少ない上、ビブラートや音程調整が生の楽器に近いやり方で実現できるので、使い方によっては重宝するかもしれません。
midi端子はもちろん、モジュラーシンセサイザー同士を連携させるCV端子もあるので、たとえばmother-32をテルミンからコントロールすることも可能です。
ちなみにThereminiも最近買ってみたのですが、それに比べると音程のコントロールがかなりしやすいです。
6. Matriarch
パッチング可能な49鍵シンセサイザーです。Martiarchとは「女家長」という意味らしく、Motherや、Grandmother(Matriarchの小さいやつ)の最上位機種に当たるみたいです。他の製品と比べてカラフルな見た目ですね。
同時に4音まで鳴らすことができて、空間系のエフェクターも内蔵されています。パッチングによって自由に音色を作れたりコントロールができたりするので、アフタータッチをカットオフにパッチングしたり、Mother-32のシーケンスと同期させたりとかなり面白いです。
ただ本体が15Kgあって頻繁に持ち運ぶのは難しそうなので、基本的には家で使うことになると思います。こちらは買ってからまだ2ヶ月くらいなので改めてレビューします。
7. Moog One
16音まで同時に鳴らせるアナログシンセサイザーです。Moogで現在販売しているシンセサイザーの中では最も高く、プリセットに入っている音がものすごいものばかりです。
エレクトリックピアノのような音色もあって、まるで普通のデジタルシンセサイザーのように曲を演奏することができます。ただ、16音までしか発音できないので、ペダルを踏みながらの演奏は難しいこともあります。
一般的なアナログシンセと同じようにツマミを動かしながら音色を作っていくのが良い使い方なんだと思いますが、あまりにもツマミが多すぎてどうしたら良いのか分からないというのが正直な感想です。
アフタータッチやXYパッドで任意のパラメーターを変えることができたり、ペダルコントローラーを4つ接続することができたり、想像し得る音色の変化はほぼ実現できます。
おわりに
いかがでしたか。ソフトシンセサイザーの便利さも良いですが、実機を持って一緒に生活するのもとてもいいと思います。皆さんもぜひ購入してその良さを味わってみてください。
…と言いたいところですが、つい先日どれも大幅に値上がりしてしまって、気軽に買える値段では無くなってしまいました。
値上げ前の在庫が残っていればそれを、もし無さそうだったらメルカリなどの中古のものを探してみると良いかもしれません。大きく値崩れするようなものでもないので、迷ったら早めに買っておくことをオススメします。
ちなみに今回は紹介しませんでしたが、MoogのシンセサイザーではMavisという組み立て型のモジュラーシンセが最安ですので、これもオススメしておきます。
追記
英語ですが、サウンドデザイナーのLisa Bella Donnaが話している「モーグの選び方」という動画も面白いです。記事版はこちらから見れます。
「こんな内容を扱ってほしい!」というリクエストがありましたら、こちらのフォームから入力していただけたら、ふとした時にまとめるかもしれません。