作曲家モーツァルトの名前を知らない人はいないと思いますが、彼の最初期の曲を知っている人は多くないと思います。
今回は神童と呼ばれていたモーツァルトが5歳の時の曲を分析してみましょう。ケッヘル番号はK.1(1e)です。
余談ですがケッヘル番号とは、モーツァルト作品を整理するためにケッヘルさんが付けた番号です。
さて、楽譜には”MENUETT No.1 mit TRIO”と書いてありますが、これはドイツ語で「メヌエット1番 トリオ付き」という意味です。その下の”fuer das Pianoforte”は「ピアノのための」という意味です。
実際の音はこちらから聴いてみてください。ヴァルター・クリーンという方の演奏のようです。
全体的にかわいらしい雰囲気の曲で、小鳥が動き回っている様子や、朝日がさしているようなさわやかな印象を受けます。
楽譜全体をながめてみると、曲の最初の方は音が少なくて、後半は和音や16分音符が多く出てきていますね。
これは作曲するときに大事な考え方なんですけど、曲の統一感を持たせるために、その曲全体で使い続ける音の並びがあるんです。これはモチーフと言います。
超有名なモチーフと言えばこれですね。ジャジャジャジャーンこと、ベートーベン作曲「交響曲第5番」より第1楽章のモチーフです。
じゃあこの曲のモチーフは何かというと、曲の一番最初にある2つの音(シ→ソ)がモチーフでしょうね。もう一つ音を増やしてスラーを付けた形を探してみると、似た形がたくさん見つかると思います。
このモチーフは3度下行(間の音を1音飛ばして下りる形)になっていますが、2小節目の最後にも、4小節目の最後にもありますね。
(念のためですが、上の画像にある中途半端な小節は0小節目です。)
さて、Trio(トリオ)と書かれている部分から調号が変わっていますね。#1つのト長調からハ長調に転調しました。
普通、トリオの部分では♭が1つ増える(もしくは#が1つ減る)ような転調をします。専門的にいえば、下属調への転調です。かっこいいですね。
エルガーの有名な曲である《威風堂々》でもトリオの部分が出てきますね。0:31が#2つのニ長調で、トリオが2:32から#1つのト長調で始まります。
ところで、実はこの曲にもトリオがあります。最初は♮なんですが、トリオから♭1つの調になりますので、ぜひ聞いてみてください。
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