私の通っていた中学校では秋ごろ文化祭があり、その中で合唱コンクールを開催していました。この時期はずっとピアノの練習をしていた気がします。
私の時代には、クラスに1人はピアノが弾ける人を振り分ける暗黙のルールがあったようですが、今はどうなんでしょうか。
そんな思い出深い(?)合唱コンクールですが、ここ4年くらいは指導者として関わっています。大学院の先輩が勤めている学校にお邪魔させてもらって、指導やコンクールの審査などをしてきました。
合唱コンクールは参加するだけでもいい思い出になると思いますが、コンクールとある以上、いい成績を残したいと思う気持ちも湧くと思います。
クラス全体で賞を取ることや、伴奏者、指揮者として賞をもらうこともあるでしょう。
今回は、合唱コンクールで賞を取るためのコツをこっそりまとめたいと思います。他のクラスの人には秘密にしておきましょう。
楽譜を読めるようにする
これが全体の8割を占めていると言っても過言ではありません。
楽譜には作曲家が望む全てのことが書いてあります。どういう響きにしたいのか、強弱のバランスはどうかなど、作曲家が試行錯誤を繰り返した「推敲された音」が並んでいます。
その意味を音楽的に理解できないと良い演奏をすることは難しいです。
楽語・記号の意味を知る
小中学校の音楽の授業でも扱われる内容ですが、まずは書かれている音楽用語(=楽語)や記号を理解する必要があります。よく見るのは次のような記号でしょうか。
速度に関するもの…rit./a tempo/
強弱に関するもの…crescendo/cresc./decrescendo/dim./p/mp/mf/f/
反復に関するもの…1カッコ、2カッコ/D.S./Coda/
アーティキュレーション記号…アクセント/スタッカート/スラー/テヌート
その他…フェルマータ
このような楽語・記号の意味を調べて、クラス全体で共有しましょう。インターネット検索で十分できると思いますが、音楽室には楽語をまとめた本が本棚に置いてあったりするので、それを使っても良いでしょう。
アーティキュレーションがたくさんついている部分は作曲家が大事だと思っている部分であることが多いので、どのように歌うかを話し合って決めましょう。
歌詞を読み解く
歌っている中で歌詞を発音することはあっても、丁寧に読み込んで、丁寧に音読することは少ないのではないでしょうか。音として聞こえるだけで、気持ちが乗っていない歌を聴くことがよくあります。
どのような場面なのか、誰が登場するのか、どんな気持ちで歌詞を書いたのか、この歌詞に特徴的な単語はどれかなど、国語の授業であるかのように考えて話し合いましょう。
特に、曲名やそれに関連した言葉が出ている部分は音楽的にも重要である場合が多いです。
理論的な分析をする
これは伴奏者や音楽の先生、時には伴奏者のピアノの先生にも協力してもらいましょう。
合唱曲は朗読とは違ってメロディーや伴奏がついています。音楽そのもので表現をしていることも多いです。
例えば曲の途中で転調したり、暗い雰囲気から明るい雰囲気になったり、メロディーが高い音になったりと、その曲をその曲だと認識できるような特徴があるはずです。
なぜ作曲家がそうしたのか、もしそうでなかったらどうだったかを考えて、作曲家の意図することに少しでも近づきましょう。
作曲家は楽典、和声、対位法、コード理論、合唱編曲など、さまざまな音楽理論を知っている上で曲を作っていることが多いです。
もし少しかじってみたいということであれば、手始めに楽典の本を買うことをおすすめします。音大受験にも必要な知識で、メルカリなどで中古で買うこともできます。
音楽理論については、全員が知らなくても誰かが代表して知っていれば表現の裏付けになるのでおすすめです。
一人一人が主体性を持つ
合唱コンクールは担任の先生が入って練習を進めることが多いと思います。
その中でいろいろなアドバイスをもらうことがあると思うのですが、音楽専門ではない先生からのアドバイスは的を射ていないこともよくあります。
例えば声が小さい時に「お腹から声を出そう」と言う先生がいると思いますが、腹から声を出すということが全員理解できるとは限りません。
勘違いしてほしくないのは、音楽が専門ではなかった先生のアドバイスは役に立たないと言っているわけではありません。
先生方も分からないなりに解決策を出してくれています。先生が声が小さいと感じて、それを解決するために「お腹から声を出す」と提案してみたわけです。
これで解決しないのであれば、闇雲に歌うだけではなく違う手段を取ることも考えるべきでしょう。
最近では合唱や発声についてのコンテンツも増えてきましたし、インターネットでの情報収集もいいでしょう。
他にも作曲家のSNSや、作曲者自身が指揮を振っている動画など、人によっては宝になるような情報がそこかしこに転がっています。
先生に頼りきりでなく、むしろ先生方に教えるくらいの勢いで情報を集めてみてください。勇気があれば、作曲者に直接メッセージをしてみてもいいかもしれませんね。
クラス全体で指揮の勉強をしよう
合唱コンクールでは指揮者が選ばれますが、指揮の勉強をしたことはある生徒は全くと言っていいほどいないと思います。
指揮者は音楽の先生から指揮を教えてもらったり、最近ではYouTubeで動画を見て練習しているという人もいるでしょう。
私も動画をアップしていますが、最初の指揮の動画は20万回を超えて再生されており、中学生が何とか情報収集をしようとしているのが伺えます。
指揮についての基本的な知識がないと指揮は振れませんが、それを見て歌う人たちも知識がないと指揮者の意図を汲み取ることができません。
試しにクラス全体で4拍子とか3拍子の振り方を練習してみてもいいかもしれません。大きく歌って欲しい時は図形を大きくするので、徐々に大きくしたり小さくしたりすると、指揮の難しさを知ることができるでしょう。
YouTubeにあるプロの指揮を見てみるのも大事です。発展的な振り方ばかりだと思うので自分たちの指揮に活かすのは難しいかもしれませんが、何を求めてそう振っているのかを考えることには意味があると思います。
おわりに
これまで書いたことはどれも手段であって目的ではありません。
コンクール直前になると焦る気持ちから周りに無茶なことを要求しがちですが、あくまでも楽しんで、協力して歌うために上の考え方を使ってもらえたらと思います。
皆さんが納得する歌を歌って、合唱コンクールがいい思い出になるよう祈っています。
「こんな内容を扱ってほしい!」というリクエストがありましたら、こちらのフォームから入力していただけたら、ふとした時にまとめるかもしれません。