皆さんは現代音楽という言葉を聞いてどんな音楽を思い浮かべますか? 最近流行っているアニメのOPとか、YouTubeで人気のボカロ曲などでしょうか?
ちなみに私は『きゅうくらりん』にハマってずっと脳内再生をしていましたが、実はこれらの音楽は現代音楽ではなく現代の音楽と呼ばれます。
現代音楽はざっくり言うと「クラシック音楽の文脈における、第二次世界大戦以後の音楽(諸説あり)」のことを指していて、例えばジョン・ケージの4分33秒(ピアノの前に座って何も演奏しない曲)のようなものが挙げられます。
こういう音楽を、私は大学で作曲したり研究したりしてきました。
この記事を読んでいる方の中には、私がこれまでに提供した曲を聞いているという方もいると思うのですが、これまで私が勉強してきたものについて知る機会がはなかったはずです。
なので今回は「現代音楽を勉強してきた作曲家が、どういう考えを持って作曲をしているのか」をまとめてみたいと思います。
現代音楽について
現代音楽は分かりにくいとか、複雑な音楽だとか言われることが多いですが、実は私自身もいまだにそう思っています。
初めて現代音楽を聞いたのは大学に入学して2ヶ月経った頃だと思いますが、研究室で教授と先輩がガーガー鳴っている曲を聞いて感想を言い合っているのにはとても驚きました。
そして、そういう音楽を真面目に作っている人がいることに対しても驚きました。これまで練習してきたバンドの曲とは全く違う音楽でした。
現代音楽の一つの例として、ブライアン・ファーニホウのピアノ曲を挙げてみます。彼の曲は複雑なものが多く、楽譜を見ても全く演奏できる気がしません。
現代音楽では作曲家が新たな響きを求めて創作することが多いので、こういう曲が作られることが多いです。
とはいえ、全く違う雰囲気の曲もあって、例えばスティーブ・ライヒという作曲家の『18人の音楽家のための音楽』は聴きやすいサウンドが続きます(もちろん長いので聴きにくい、というのはあるでしょうけど…)。
他にも、私が好きな作曲家にリゲティという人がいるのですが、彼の曲は分かりそうで分からない絶妙なところを突いてくるのが面白いです。
下の動画は18曲がまとめて演奏されているのですが、5曲目の『虹』という曲には美しくもあり、怪しくもある、独特な雰囲気が感じられると思います(動画は5曲目から再生されます)。
このように、作曲家によって全く曲の雰囲気が違うのが現代音楽というジャンルです。モーツァルトやベートーヴェンなどの作曲家に見られる「時代性」のようなものはほとんど感じ取ることができません。
それぞれの作曲家に共通しているのは「独自の、新しい響きを聴きたい」という欲求だと思います。
私の制作
私も「難しい音楽」を作っているのかと思われることが多いのですが、コンセプト優位の、聴きやすい曲が多いと思っています。
例えば下の動画はチューバソロの曲で、大学時代の先輩がリサイタルで演奏してくれたものです。
1曲目はピストンを全く押さずに演奏する(=自然倍音列の音のみを使う)んですが、これは金管楽器の基礎練習や音出しを参考にしています。
私は金管楽器を演奏することができないので、これまでに練習会場で見ていた、偏った楽器に対する知識を拡張した、という感じでしょうか。
こういう曲を聴いてもらうことで、聴いた方の考え方や聞き方がアップデートできないかと考えています。
少し話が逸れますが、今では多くの方が音楽に対して安心感や高揚感を求めていると思うのですが、音楽の歴史を振り返ると必ずしもそうではありませんでした。
録音技術が確立するまでは音楽はコンサートホールなどに足を運ばないといけないものでしたし、それ以前はお金持ちの楽しみのためや祈りのために使われていました。
音楽には色々な使われ方があるなら、現代美術みたいに何かを考えるきっかけとしての使い方があってもいいのではと思っています。
ファンファーレにはピストンを押さなくても演奏できる曲が多くあります。
短いものが多いのですが、もっと長い曲を作るにはどうしたらいいでしょうか。これを考えるのが面白い、という人が現代音楽の作曲家なんだと思います。
ピストンを使わずに出せる音には限りがあり、高い音を出そうとすると少しピッチの外れた音になってしまうので、そういう音だけで曲を構成しないといけません。
ある種の制約を意識的に設けて、その中でいかに面白い曲が作れるかを考えて作曲をしています。
もちろん、コンセプトや作る大変さを知ってもらいたいのではないので、普通の曲として聞いてもらっても十分嬉しいです。
私としては面白く展開させたりクライマックスを用意したりしているつもりですが、聞いても分からないという方は少なくないと思います。こういう曲はとりあえず聞いて、解説をしてもらう中で雰囲気を掴めることが多くなるはずです。
(ちなみに、先日ツイートしたフルートの曲は近いうちに演奏動画が出せると思うので楽しみにしてください。)
ちなみに、こんなフルートソロの曲を演奏してもらってきました。演奏してみたいという方がいたら是非お願いします! https://t.co/I6LIVSsQzJ pic.twitter.com/C9uZFyt2Ce
— (作曲家)よしたく(作曲家) (@yoshitaku_p) September 1, 2023
まとめ
普段はこんなことを考えて曲を作っています。
基本的な創作理念は変わらないので、ジャンルが違う曲を作る時にもコンセプトを決めたり、制約を設けたりしていることに変わりはありません。そして、どんな曲も一生懸命作っています。
私の作った曲を聞いて裏に隠されているメッセージを探してみるのも面白いかもしれません(し、実はそういうのを期待して曲を作っている部分もあります)。
もし何か気になることがあったら遠慮なく質問してください。答えられる場合はお答えしたいと思います。
「こんな内容を扱ってほしい!」というリクエストがありましたら、こちらのフォームから入力していただけたら、ふとした時にまとめるかもしれません。